「森林って何?」って聞かれるとたいていの人は「木がいっぱいある山」などのような答えが返ってくるのではないでしょうか!?

森林」って言葉は、木が3つの「」に木が2つの「」が合わさってますから、その名の通りいっぱい木がありそうですよね!

徳島県那賀町の風景 ⇒ 森林って感じがしますよね!

そこで、今回は森林の定義について整理してみます!

森林とは?

辞書で調べた説明文

まずは辞書やで森林の説明を確認してみたいと思います。

簡単に確認できるところで調べてみるとこんな感じです↓

広辞苑(第6版)

樹木の密生している所。もり。はやし。

goo辞書

樹木、特に高木が群生して大きな面積を占めている所。また、その植物群落。

類語新辞典

しんりん(常)ーの家事。ーから木を切り出す。ー地帯[資源]

(注)「森」より「森林」の方が規模が大きい感じがある。

Wikipedia

森林(しんりん)は、広範囲にわたって樹木が密集している場所である。集団としての樹木だけでなく、そこに存在するそれ以外の生物および土壌を含めた総体を指す。

辞書でもみなさんのイメージ通りの説明のようですね!

森林は、「樹木がある程度まとまって生えている場所」ということで間違いなさそうです。

日本の中でもいろいろな気候帯があり、地域によって樹木の種類も違うし、社会とのつながりも違うため定義を決めることは難しいこともあり、漠然とした内容になっているのかもしれません。

数字でみる森林の定義・基準

国際基準

地球規模で森林に関する世界的なデータ収集、取り決めを行う際には森林の定義として共通の基準が必要となります。世界でデータを同じ条件に揃えないと比較検証などができないですからね!

(現在国内でも新型コロナの基準がバラバラで比較しづらいなどありますよね)

国連食糧農業機関(FAO)

世界森林資源評価(FRA)を行うFAOは、森林を以下のように定義しています。

FAOの定義
・樹高5m以上となる樹木の樹冠被覆率が10%以上であり、
・0.5ha以上の広さがあり、
・農地など森林以外の目的に使用されていない土地
補足事項
・上記の条件を満たせば、竹林やヤシ林、ゴムのプランテーションも含まれる
※ただし、果樹やパームのプランテーションは含まれない

定義に出てきた、「樹冠(じゅかん)」というのは樹木の幹の上部にあって枝や葉の茂っている部分のことで、「樹冠被覆率(じゅかんひふくりつ)」というのは、空から見たときに土地に対して樹冠が占める割合です。

上記の定義では、樹高5m以上の樹冠被覆率が10%であるため、樹木の密度が低い林も森林に含まれることになります。

いろいろな環境があるけど、全部森林になる!?

国連環境計画(UNEP)

FAOの定義では樹冠の連続性の低い疎林と樹木の密度が高い樹林を区別するために、下記の区分を設けています。

・樹冠被覆率40%以上 ⇒ 閉鎖林
・樹冠被覆率40%未満 ⇒ 疎林

森林の樹幹被覆率に応じて「閉鎖林」と「疎林」に区分

生物多様性条約(CBC)

生物の多様性の保全と持続可能な利用などを目指すCBCでは、ほぼFAOと同じ内容を採用しています。

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)

京都議定書の約束機関に各国に報告を求めた森林の定義では、FAOの定義から幅を持たせた値を用いることを認めました。※理由の説明は必要とのことです。

FAO UNFCCC
樹高 5m 2~5m
樹冠被覆率 10% 10~30%
面積 0.5ha 0.01~1.0ha

日本の基準

日本では、森林の定義は森林法に定められています。

森林法の森林の定義
①木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹
②前号の土地の外、木竹の集団的な生育に供される土地
※但し、主として農地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地及びこれらの上にある立木竹を除く

森林法では数値は示されていませんが、UNFCCCへの報告に用いた定義としては、日本の既存の森林計画制度上の対象森林への整合性を考慮し以下の数値を用いています。

UNFCCCへ報告した日本の森林定義
・樹高 5m以上
・森林被覆率 30%以上
・面積 0.3ha以上

世界の基準でいうと森林には該当しても、「こんなにスッカスカなのにホンマに森林!?」ということもありそうですね。

とはいえ、共通認識を持つために一定の基準を設けるというのは大切なことです。

そして、樹木だけでなく、も森林にカウントされるようです!

竹林も森林!

森林の機能と多様な価値観

森林については、物理的な条件(木がいっぱい生えている土地)、ということが分かってきました。
しかしながら、そんな数字の割り切りだけで測れないものでもあると感じています。

森林の多面的機能

日本では、自然崇拝や宗教の考えの中では畏怖の対象であったり、聖地であったり、修練の場であったりしますし、近年では森林の持つ多面的な機能として水源涵養、土砂災害防止などの国土保全機能の他にもレクリエーション機能、生態系サービス機能なども評価されています。
林野庁によると、森林には次のような機能があるとされています。
生物多様性保全

 ・遺伝子保全
 ・生物種保全(植物種保全、動物種保全(鳥獣保護)、菌類保全)
 ・生態系保全(河川生態系保全、沿岸生態系保全(魚つき))

森林があることで生態系、種、遺伝子の多様性が保全されます

地球環境保全

 ・地球温暖化の緩和(二酸化炭素吸収、化石燃料代替エネルギー)
 ・地球気候システムの安定化

温室効果ガスである二酸化炭素を固定します

土砂災害防止機能/土壌保全機能

 ・表面侵食防止
 ・表層崩壊防止
 ・その他の土砂災害防止(落石防止、土石流発生防止・停止促進、飛砂防止)
 ・土砂流出防止
 ・土壌保全(森林の生産力維持)
 ・その他の自然災害防止機能(雪崩防止、防風、防雪、防潮など)

間伐されて下草の生える山は土砂流出を防ぎます

水源涵養機能

 ・洪水緩和
 ・水資源貯留
 ・水量調節
 ・水質浄化

森林があるからきれいな水がある!

保険・レクリエーション機能

  ・療養(リハビリテーション)
  ・保養( 休養(休息・リフレッシュ)、散策、森林浴)
  ・レクリエーション(行楽、スポーツ、つり)

森林でキャンプしてリフレッシュ!

快適環境形成機能

 ・気候緩和(夏の気温低下(と冬の気温上昇)、木陰)
 ・大気浄化(塵埃吸着、汚染物質吸収)
 ・快適生活環境形成(騒音防止、アメニティ)

森林って夏でも涼しくて気持ちいい♪

文化機能

 ・景観(ランドスケープ)・風致
 ・学習・教育( 生産・労働体験の場、自然認識・自然とのふれあいの場)
 ・芸術
 ・宗教・祭礼
 ・伝統文化
 ・地域の多様性維持(風土形成)

サーフィンだって起源は木のボード!

物質生産機能

 ・木材(燃料材、建築材、木製品原料、パルプ原料)
 ・食糧
 ・肥料
 ・飼料
 ・薬品その他の工業原料
 ・緑化材料
 ・観賞用植物
 ・工芸材料

木でできたものってカッコいい!

森林の多面的機能  出典:林野庁

森林の多面的機能  出典:林野庁

これらの様々な視点によって、立ち位置によって、また何を目的にするかによって森林の見方や定義、準拠する基準も異なり・変化することもありえます。

森林の循環利用が環境保全につながる!

都市部や下流域に住む人には直接森林に接する機会はないかもしれませんが、山から川、海は全部つながっています!
森林の多面的な機能がさまざまなところで役立っていますね(^^)
そして、持続可能な社会の実現にむけて森林とのつきあいはかかせません。

森林の循環利用とSDGsの関係 出典:林野庁

「森林とは何か?」みなさん一人ひとりに違った答えがあるはずです!

同じ森林に生えているものでも、木と竹って何が違うのでしょうか?

続いては竹について調べてみましょう!

竹の生理生態

竹の分類

まずはwikipediaを見てみましょう。

竹(wikipedia)
竹(タケ)とは、広義には、イネ目イネ科タケ亜科に属する植物のうち、木本(木)のように茎(稈)が木質化する種の総称。

なんと、竹はイネ科です!イネとは稲、つまりお米の仲間です。

分類を詳しく見ると、竹は植物界・被子植物・単子葉類・イネ目・イネ科・タケ亜科に属します。

竹林の様子 そういわれると稲と似ているかも!?

では木はどのような分類になるのでしょうか?杉と比べてみましょう

杉:植物界・裸子植物門・マツ綱・マツ目・ヒノキ科・スギ亜科・スギ属・スギ種です。

分類によると、スギはどうやらマツやヒノキの仲間のように感じますね!

《豆知識:分類の区分》

生物の分類には界(かい)・門(もん)・綱(こう)・目(もく)・科(か)・属(ぞく)・種(しゅ)という段階ごとに仲間分けを行っています。

たとえば私たち人間は動物界・脊椎動物門・哺乳綱・霊長目・ヒト科・ヒト属・ヒトですよ~

生物で習うので是非調べてみてください!(授業で「カイ・モン・コウ・モク・カ・ゾク・シュ!」って言わされたのが懐かしいです)

竹類の生理生態

幹と稈の違い

タケ類は樹木と違い幹(みき)ではなく稈(かん)を持ちます。

この稈には樹木にみられる形成層(けいせいそう)がなく維管束(いかんそく)が散在しています。

樹木は一年一年太くなっていきますが、これは形成層という幹が成長する部分があるからなのです。

一方でタケ類には維管束しかありません。維管束というのは水分や栄養分を運ぶ機能がありますが、形成層のように肥大成長することはありません。

この生理生態から樹木とは明確に区分されています。

木のようになる!?

イネ科の稲(イネ)は田んぼに春植えて夏・秋に収穫しますよね。一度花を咲かせ、実(=米)をつけると後は枯れてしまいます。

このように1年周期で世代交代する植物を単年性植物と呼びます。

一方でタケ類は、一年では枯れずに数年間生えている多年生植物です。この数年のうちに稈にリグニンが蓄積して木化(もくか)、つまり木のように固くなると言われています。

固い竹も最初はタケノコです。あの柔らかいタケノコが成長して固い竹になるとは不思議です!

竹は何でできているの?

タケが固くなるのには木には無い成分も関係しています。

タケ類は春にタケノコを出します。タケノコの9割が水分ですが、残る1割のうちのタンパク質、炭水化物、食物繊維が 1/3ずつを占めます。木とは違って栄養が豊かなようです。

その他にもリン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄やいろいろな微量元素(ミネラル的なもの)もたくさん含まれています。

カルシウムも入ってるなんて丈夫そう!

参考↓

たけのこの成分・栄養

また、タケ類はタケノコに含まれるような無機養分に加えてケイ酸を土壌から吸収します。

ケイ酸はガラスの主成分でもあるような固い性質を持ちます。これは細胞壁や細胞内に蓄積し、細胞壁の構造を強化する機能を持ちます。

ケイ酸は一般的な土壌中に含まれるものの、それを吸収して利用する植物種は限られています。

つまり、他の種との栄養の奪い合いがなく、いつでも竹が利用できるケイ酸があることでタケ類が生産地を拡大させているのかもしれません。

みんなが使わないものを使うのがタケの生存戦略か!?

タケの種類

日本では竹と言えば、食用のタケノコが成長したものというイメージが強いのではないでしょうか?

タケ類には23種もあります。もちろん種によってタケノコの形や味も異なりますよ!

(ちなみに、タケ亜科にはササ類があり、ササ類は76種も種類があります。)

国内ではマダケ属の孟宗竹(モウソウチク)、淡竹(ハチク)、真竹(マダケ)などがよく知られています。

私たちが食べているタケノコで最もポピュラーなのが孟宗竹(モウソウチク)のタケノコです。

孟宗竹のタケノコ

この孟宗竹は全国各地で見られますが、実は日本の固有種ではないんです。。。

1740年ごろの江戸時代に中国から導入されたという記録があり外来種になるんですね。

今では一般的であり、ふるさとの風景でもある竹林ですが昔はどんなんだったんでしょうか。

《豆知識:杉は固有種?》

ちなみには、学名が「Cryptomeria Japonica(隠された日本の財産)」にもなっているとおり日本固有の在来種です。

杉は植林された人工林のイメージがあるかと思いますが、天然林で育った杉ももちろんあります。自然に生えていた杉がすごい良かったため、たくさん使うためにいろんなところに植えたんでしょうね!

タケの成長・繁殖

樹木は花粉を飛ばし受粉して種を飛ばして繁殖します。

そして、種子・実の量の増減はあれ、毎年行われます。

(なので花粉症の方は毎年大変ですよね(;^_^A)

イネ科のタケ類も、稲と同じように花を咲かせ種子を作りますが毎年というわけではありません。

タケ類の開花周期は特に長く、マダケではおよそ120年と推定されています!

タケ類は開花後に多くの場合、枯死することが確認されています。マダケなどは開花してもほとんど種子を生産せず、枯死後に生き残った一部の地下茎から新たなタケノコを出し世代をつないでいます。

徳島でも最近一定規模の竹林の枯死があったと聞いています
では、花が咲かない間はどうするのか?
当記事中にもすでに書いている通り、タケ類は地下茎からタケノコを出して世代をつなぎます。
モウソウチクの成長はタケ類の中で特に早く、1年間で地下茎を数mも伸ばしたし、タケノコは地上に出てからわずか数か月で20mを超える高さまで伸びて伸長成長をほぼ完了させます。
タケノコは親竹や地下茎に蓄えられた養分をつかって成長するため、近くに竹が生えていればどんどんとタケノコが出ます。
そしてタケノコが竹になり、地下茎を伸ばし、またタケノコを生やすというループを繰り返して竹林はどんどんと拡大しています。
日本では、こうして竹林が拡大していくことが竹害と呼ばれています。周囲のもともとあった植生や環境に侵入するためさまざまな影響が懸念されています。
日本の固有種でもないし、しっかり管理しないといけないね!
《豆知識:木の更新もいろいろ》
樹木はタケのように地下茎での繁殖はありません。
ただし、広葉樹などでは切り株から新しく芽が出る萌芽更新(ほうがこうしん)が行われます。
木を切り倒しても、切り株から出た芽が成長することで永続的な資源となります。
スギなどの針葉樹は植林する苗木を育てる際には挿し木という手法も使います。
簡単にいうと、枝から根っこを出して育てるとうものです。
(トマトの脇芽を土にさして育てるイメージ)
木の成長・繁殖にも人の手が加わることでいろいろとバリエーションがありますね!

まとめ

同じ森林といえど、木と竹では生理生態が全然違いましたね!

・竹は木ではなくイネ科の多年生植物
・木の幹のように竹の稈には木質成分が含まれる
・竹は他の植物が使わないケイ酸を吸収する
・地下茎からタケノコをだして生息域が拡大する
・100年などの周期で開花し、多くの場合はその後枯死する
竹については利用法や加工についても木と比較しながら記事にしていきたいと思います!
参考:日本森林学会編 森林学の百科事典
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